なぁ、君ファミレスを享受せよ。
月は満ちに満ちているし、ドリンクバーだってあるんだ。
つい先程、ファミレスを享受せよをトゥルーエンドまでクリアした。ブラウザで無料で遊べるのでぜひ。
何から話せばいいのか。BGM、ドット絵、キャラクター、ゲーム性、何もかもが良かった。説明的な文章はよして、クリアして、クリアした人達の感想などを読み、YouTubeで公開されているBGMを聞いた今、思うことを話したい。
・神BGM ぜひ聞いてください
静かな夜に
https://youtu.be/FPhJgjJ4u2c?si=7t5Fb56zaZxIvEs0
今作の物語は、もうすでにあらゆることが始まり、過ぎた後の話なのである。ムーンパレスに来たツェネズ、ガラスパン、王、そしてセロニカ。主人公が来る前に彼ら、彼女らの間で様々なことが起こり、すっかり誰もが諦観してしまった、そんな"永遠のファミレス(ムーンパレス)"に主人公が訪れ、この物語は始まる。
多分ここから出ることは出来ない、諦めてここで過ごそう。どのキャラもそのような諦観が滲み出ている。特にガラスパンは外に出れたら…と考えながらも諦めて永遠を過ごすことを"享受"している。不変の安寧。
静かな孤独が感じられつつも、ムーンパレスの住民達と雑談をして暇をつぶそうという、諦めている適当でなんとなく柔らかいところがこの作品の魅力だと思う。
・無意味な会話
キャラクターと会話を繰り返し、新たな話題を手に入れ、またキャラクターと会話をする。中には、「ケーキってある?」「好きなドリンクバーは?」「雑談をしよう」「高貴なる雑談」「夢想者の雑談」など、意味の無い会話もある。というか、意味の無い会話をじっくりと楽しめるのがこの作品の心地良いところだ。
特に、ガラスパンの金色のカブトムシの話、セロニカの地球最後の日に歯磨いてそうの話が良かった。王のスープの話も良かったし、ツェネズの涙が流れないんです、涙って冷たいのかなぁ?という話も良かった。
そう、ワードセンスがとても良い。それぞれのキャラの無意味な雑談、に見えて本質的な会話を軽くオシャレに流している。ガラスパンのミステリー小説の話も良かったな。もう書き出しが良かった。
・対話
雑談という対話もそうだし、物語(トゥルーエンド)の最後にも対話が用いられる。この辺りはなんとなく、シンエヴァの終わり方を彷彿とさせた。
最初から主人公がキャラに話しかけまくるのもそうだし、みんなで話して解決しよう、という解決方法は、とても明るいし、この作品の随所から感じられる温かい"やさしさ"だと思った。
・トゥルーエンドまでやって欲しい
初めは大体の人がノーマルエンドだと思うのだが、ぜひトゥルーエンドまでやって欲しい。とは言っても、最後の分岐前でセーブをしておけばすぐに周回できるし、元々始めてからクリアまでが長いゲームでもないので、ぜひ。
トゥルーエンドをクリアした後にBGMを聞く。最後の曲、月に座るひとり/ふたり。
中盤から様々な事が判明し、思ったより話が壮大になったり、最初が緩かっただけに、どうなっちゃうんだ!?!?とも思ったが、悲しい話を鋭く描かずに、ドット絵のイラストと諦観した雰囲気で包み、柔らかく、やさしい作品となっているのは、制作者であるおいし水さん自身の前向きさなのかなと思う。
また、全てを語らず、プレイヤーにある程度解釈を委ねる世界観が良かった。
月に座るふたり。孤独で優しく、温かい永遠。
ファミレスを享受せよ はまさに、静かな孤独を内包した夏の夜のような心地良い作品だった。
私もファミレスを享受しながら生きていきたい。でも私は、バスの方が享受しているかもしれない。バスはとても良い。
ファミレスを享受せよ、をクリアして、久々に色んなゲームをやりたいなと思った。まぁ、色々やることもやりながらゲームしていきたい。