気づいたら一日が終わっていた。いや、今はそういう感覚がしている。時間の流れが早いような、遅いような。あまり現実感がない。疲れているからだろうか。生きている実感というものがしない。何のために生きているのだろう、死ぬまでの暇つぶしとして生きているんだろう、と分かりきった自問自答をする。なんだろう。やる気が出ない。楽しい気持ちも湧かない。生きる気力があまり無い。まだ4時過ぎだけれど、帰ってお風呂に入ってもう寝たい。でも寝たら明日が来る。明日も授業があって、帰ってきて、また。
昨日は楽しかったはずだ。いや、楽しかったとかそういう感情でもない。立方体のデッサンを授業でやって、私はどうしても自分の出来に納得できず、居残ってやっていたのだ。ずっと集中していたから頭が重くて、めちゃくちゃ疲れた。それでもデッサンへの意欲は湧いたはずだ。しかし、今の私には創作意欲というものが無い。いや、それどころか、この世界の全てが夢のように思える。
家に帰ると思う時、いつも、帰ってきておばあちゃんに怒られないかなと思う。それで、憂鬱になって家に帰りたくなくなる。
昨日、「残ってやる人いる?」と先生が聞いた時、私は手を上げなかった。いや、上げられなかった。「誰もいないね」「じゃあ終わり」先生はそう言って、授業終了の挨拶をして、みんな席を立ってスケッチブックを次々に提出して教室を出ていく。私は最後まで粘って描いていた。こんなんじゃダメだ。絶対点数低い。やばい、全然できてない。人はどんどん減っていき、もう数人しか残っていない。もうダメだ。仕方ない、もういいや。私はそう思ってスケッチブックを提出した。
帰りのHR、私の頭の中は立方体のデッサンのことでいっぱいだった。ダメだ、やっぱり納得行かない、あのまま終わらせられない、HR終わってすぐ美術室に行けば先生いるか?でも先生、どっかのクラスの担任だったよな、HRでまだいないかも、いなかったら諦めようかな、いや、職員室にも行こう。やっぱり居残りますって言わなきゃ、早く。
HRが終わり、頭が少しぼぅっとしているまま、私は緊張しながら、足早に階段を駆け下り、美術室へと向かった。美術室に入り、中を見回す。前の席の方に1人、人がいた。しかし、先生の姿はなかった。ダメだった。いない。私はそっと美術室を出て、数歩、進んだ。どうしよう。やっぱり帰ろうかな、だってあのままでも別に良いわけだし、「先生探してますか?」
後ろから声がして振り向く。「先生探してる?」美術室に1人いた人だった。3年生っぽい、ヘッドホンを肩にかけているショートカットの女の子。私は駆け足美術室へまた戻った。「あ、はい!」緊張して、両手を重ねて握る。「先生〜、ちょっと来てくださ〜い」
「は〜い」どうやら美術室の隣の準備室に居たようだ。先生が来た。「あの、やっぱりこれの続きやってもいいですか?」私はスケッチブックを指さしながらそう言った。「いいよ」
先生はとても的確に教えてくれた。すごく勉強になった。