生活の日記

文章を書くのが好きな人間が、ただ吐き出しています。楽しいから書いています。

2024-3/25 キュートアグレッション/キタニ について語る

タニタツヤの曲、キュートアグレッション。投稿されたのは少し前なのだが、最近、この曲天才だな、、とすごく思い、どうしても書きたくなったので、書くことにする。

 

・キュートアグレッション/キタニタツヤ

https://youtu.be/jfcqoMZdqkk?si=tfTckZvTrdWghvuC

こちらの曲です。ぜひ聞いてください。

最近またこれを聞いたのだが、改めて思った。キタニタツヤは音楽界の文豪だ。聞く文学である。とにかく歌詞が良い。良いというか、詩的で、時に耳心地の良い韻を踏んだりと、ワードセンスがとても良い。前からそうは思っていたのだが、最近は特にそれを強く感じた。

キュートアグレッションの歌詞が良いので、ちょっと、良いと思った歌詞を載せながら、どこが良いのかなどの感想を言っていく。

 

まず最初。

「他人の痛みには鈍感で

自分の痛みには敏感な僕ら」

出だしから天才じゃねえか!!!!!この歌詞が出てくるのすごいよ、、、

少し飛ばして、

「止まない春の狂躁で」

語感が良い〜!!思わず口ずさみたくなるフレーズ!そして、"狂躁"が"狂騒"っていう漢字の方が多分よく使うんですけど、"躁"の方になっているのが、良い。これは私の解釈なのだが、ただ単に騒いでいるというよりかは、"異常に狂っている"という印象を強めるためにこっちの"躁"にしたんじゃないかなぁ、と思った。

「36度あまりの

君の首筋に

少し跡が残ったって、構わないでしょう?

だから今は許して」

これ字に起こすと、本当に文学だな。小説の一節と言われてもおかしくない。まず、"36度あまりの"、これは体温のことを示していると思うのだが、表現が上手すぎる!!!やっぱり文豪。そして、"構わないでしょう?"、歌い方が良い。"だから今は許して"、キタニタツヤは本当に人間の弱さを表すのが上手い。上手いっていうか、リアルな弱さが歌詞に現れている。"キュートアグレッション"って聞くと、暴力的な強いイメージなのだが、この曲は強くない。キュートアグレッションを感じる自分の"弱さ"、みたいなものを歌っている、と感じた。

「こんな化け物にだって

親がいたりするんだ

無責任な人もいるね」

ハッとした。キタニの歌詞ってなんか、たまにハッとさせられるんだよな。

別の曲の話になってしまうのだが、プラネテスの歌詞で、これまた、ハッとしたものがあった。

プラネテス/キタニタツヤ

https://youtu.be/u3NTknpzRvs?si=0rdKHBCJw9SXoA39

これも良いので聞いて欲しい。

 

「死んでしまった誰かのニュースに

涙した優しい人たち

這いつくばって生きる誰かの

生きているざまには舌打ちをした」

これすごいなと思った。言ってること自体は私も思っていたことで、すごく衝撃を受けたとかではないのだけれど、この言い回しというか、言葉選びが良いなと思った。

"優しい人たち"って言っているのに、"這いつくばって生きる誰かには舌打ちをした"わけだ。でもこれ、優しくないって言ってるわけでもないんだよね。ただ、舌打ちをした、と書いているだけで。皮肉も入っていて非常に良い。

あとは、聖者の行進の歌詞。

 

「向かう先で待っているのが

楽園だろうが地獄だろうが

このパレードは進み続けるだけ

怒りや悲しみの歌を歌いながら

 

跋扈する悪魔を踏み潰して

震える心臓が止まってしまうまで」

な〜にこれ。だから文豪。文豪だよ。ここの歌詞が、『"聖者"の行進』のタイトルをすごく表している。喜びの歌を歌っている訳ではなく、"怒りや悲しみの歌を歌いながら"、狂信的な行進を続けている聖者っていう、。。天才すぎる。聖者って信仰者なので、普通は楽園、天国を願っている筈なんですが、"楽園だろうが地獄だろうが"、もはや信仰が嘘でもどうでもいい、"跋扈する悪魔"を踏み潰して死ぬまで行進を続ける、と。もう、この、"跋扈する悪魔"ってのも、おそらく比喩で、(跋扈…自分勝手に振る舞う、のさばる、蔓延ること)

"悪魔"は文字通りの悪魔ではなく、人間を表しているんだろうなぁ。"聖者の行進"なので、教徒が政府、政権に対して不満、怒りなどを持って行進している、という感じにも受け取れるなと。さすが東大文学部という他ない。キュートアグレッションの話はどこに行ったんだ。本当に終わらないので、聖者の行進 については終了。

 

話を戻して、この歌詞。

「一見してみれば寛容で

はみ出す僕らには狭量な世界は

hocus-pocusって言うんだ

大人はみんなペテン師さ!」

まず、上部分。"はみ出す僕らには狭量な世界は"、フレーズが良すぎる。寛容と狭量が対になっているのがとても良い。すごくイメージのしやすい言葉。そして、"hocus-pocus"は、知らなかったんですけど、まじない、呪文的な意味らしい。日本で言うと、"ちちんぷいぷい"みたいな。語感が良いね。

"大人はみんなペテン師さ!"

これ、モラトリアムを表しているなって思った。モラトリアムっていう言葉は、キタニがTwitterで言っていて、調べて知った。

https://twitter.com/TatsuyaKitani/status/1762797478003503435?t=dIHfvToSyap4K9ChxQ6iLw&s=19

もうこのキタニのツイートがあの、、哲学が深すぎる。モラトリアムは、このツイートみたいな感じで、大人になる前というか、大人になりきれていない状態を表す言葉。ちなみに、"ミッドライフクライシス"は、『中年の危機とは、中年期特有の心理危機、また中高年が陥る鬱病や不安障害のことをいう。』らしいです。(Wikipediaより)

この曲も、モラトリアムを表しているというか、そういう心境の、大人になりきれていない、でももう子供でもない"青年"の歌なのかな、と思った。

 

「かったりいアイミスユーとか

いらない、僕たちは

ルサンチマンが煮凝ったドス黒い愛を」

フレーズが良すぎる!!!!良いサビ!!!

"かったりいアイミスユー"、語感が良すぎるし、"アイミスユー"が非常に良い。"愛しい、恋しい、純粋で温かくもあり、切ない愛なんてめんどくせぇよ"っていうことを、"かったりいアイミスユー"だけで表している。それが十分に伝わってくる。素晴らしい。

そして、"ルサンチマンが煮凝ったドス黒い愛を"

良すぎ!!!!!!!キュートアグレッションの中で一番好きなところです!!!!

(ルサンチマンニーチェが使った言葉で、弱者が強者に対して、憤り、嫉妬、憎悪などを感じることを表す言葉。)

"ルサンチマンが煮凝ったドス黒い愛を"

すごいな。私もこんなフレーズをさっと言ってみたいものです。"アイミスユー"と完全に対になっている。

「八つ当たりみたいに

ぶつけて、毟り合う

くだらない泥試合に夢中になった」

これ、"愛"のことを、"くだらない泥試合"と表現しているのが、、、キタニタツヤ〜!!って感じで、本当に良い。

キュートアグレッションは、モラトリアムな青年のドロッドロの愛、ということで。キタニタツヤは本当に読む文学。ありがとうございました。